現代の岩窟王・・ますますがんばってね・・応援してま~す!
【12月6日 AFP】ホームレスのJhiymy Mhiylesさんは、2000年に五輪開催中のシドニー(Sydney)に一文無しでたどり着いた時、美しいボンダイビーチ(Bondi beach)を気に入り、絶景を見下ろす断崖の上に粗末なテントを構えた。
以来ここに暮らし、詩作に耽るMhiylesさんは、テントの場所と「伸び放題のひげ」のせいで、人々から「ボンダイの洞窟男」とあだ名されている。もちろん不法占拠だが、なにしろテントは崖っぷちに立っている。退去を促す地元自治体やテントを壊してやろうという悪党も怖気づいてしまうという。
Mhiylesさんは、AFPに対し、「私には他に行く所がない。ここを追い出されたら、私に残された場所はあそこだけだ」と話し、眼下の波打ち際を指差した。テントには、「どこにも行くつもりはない」という意志を示した海賊船の旗が何本もはためいている。
■意外な人気者、地元住民は迷惑
ボンダイは、この風光明媚なビーチのおかげで高級住宅地化がいちじるしい地域。そのためMhiylesさんの存在は、一部の地元住民をいら立たせている。
住民からの苦情が相次いだため、地元自治地は今年初めMhiylesさんを強制退去させようとした。だが、このニュースが知れ渡るやネット上にMhiylesさんを応援する数百人の署名が集まるなど、各方面から批判が噴出したため、断念せざるを得なかった。
もっとも、当人にとってはそれほどロマンチックな話ではなさそうだ。高級住宅街のゴミ捨て場から拾ってきたという椅子に座ったMhiylesさんは「『家賃を払ってないんだろ、うまいことやったな』とよく言われるんだ。そう言う奴らは冬にここで暮らしてみるといい。ひどい寒さだぜ」と話す。「もう1つのライフスタイルなんて優雅なもんじゃない。他に行く所がないだけだ」
■自称「詩人」のささやかな活動
Mhiylesさんは、自ら「詩人」を名乗っている。オーストラリアの奥地の自然をうたったヘンリー・ローソン(Henry Lawson)やバンジョー・パターソン(Banjo Paterson)といった詩人の現代版なのだという。ウイリアム・シェイクスピア(William Shakespeare)を「ボス」と呼び、こうした特異な場所から受けるインスピレーションについて熱っぽく語った。
「詩人は絶対に太らないんだ」と言って、肋骨の浮いた胸を見せる。そして「I'm the digger of doggerel, the nong (idiot) of nuance(私は下手な詩の堀り出し人。言葉のあやにおける愚か者)」と、韻を踏んでみせた。
時々地元のパブやクラブで朗読会を開いたり、そばを通りかかった観光客に自作の詩を発表しているそうだ。
■不運な生い立ち
彼は今やボンダイの風物詩の1つだ。オンラインのガイドブックに紹介されたほか、今年の『海辺の彫刻展』では、主催者側が彼の家を「インスタレーション」の1つとし、見学者が見落とさないよう案内板をつけることを忘れなかった。
Mhiylesさんは孤児院で育った。オーストラリア辺境地帯で季節労働をしていたが、仕事がなくなったためシドニーに出てきた。自分の年齢は「わからない」そうだ。
この7年間でいちばんつらかったのは、複数の人間がテントに押し入ってきて崖から突き落とされ、わずかな持ち物が焼き捨てられた時のことだ。その時、腕を骨折した。「一切が煙に包まれるのを見てとてもショックだった。その後数年間、詩作ができなかったほどだ」と、Mhiylesさんは風雨にさらされて黒く日焼けした顔をゆがめた。
Mhiylesさんは、観光客が押し寄せる前の静かなボンダイを思い浮かべるのが好きだ。独りでも鳥が友達だから寂しくはないという。そして空を舞うカササギやタカを指差してこう語った。「私が死んだら、遺体をこの崖に置いてほしい。鳥たちについばんでもらえるように」(c)AFP/Neil Sands
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